午睡は香を纏いて
「あの、あのあたし、サラって名前じゃないです。人違いだと思いますっ」
そんな態度をとられても、こちらには覚えがない。
大体、こんなに目立つ容姿をしている人と接触したのなら、忘れないと思う。
少しの申し訳なさを感じて言うと、レジェスは納得したように、ああ、そっか、と笑った。
「そっか。名前も変わっていて当たり前だよな。ええと、名前は?」
「変わって? あの、あたしサラなんて名前だったことないですけど」
「名前だったことが、あるんだ。名前、教えてくれないか?」
意味がわからない。あたし本人がないと言ってるのに。
「かさね、です。森瀬かさね」
「カサネ、か。いい名前だな」
名前を言えば、人違いだと分かってもらえるかと思ったのに、レジェスは満足そうに頷いただけだった。
「それで、カサネはいくつ? 幼くみえるけど」
「あ、と、十六です」
「十六? そうか、俺より年下、か」
呟いて、レジェスは何故だか頬を赤らめた。
「そっか、年下か。そうだろうと聞いてはいたけど、そっか。サラが年下、か」
違うと何度も言ったのに、またその名前。
『サラ』って、誰なんだろう? あたしに似てる、とか? でも、そんな単純な人違いとはちょっと違う気がする。
「……あの。レジェス、さん」
「レジィでいい。というか、そう呼んでくれ。さん、もいらないから。
なあ、ちょっと試しに呼んでくれないか」
少し楽しそうに乞われて、訳がわからないながら頷いた。
「え? あ、はい。あの、じゃあ、レジィ?」
「おう」
おずおずと名前を呼ぶと、レジィは大きな声で答えた。その顔は嬉しそうで、金の瞳がきらきらしている。
「もう一回呼んでくれないか?」
「はあ。レジィ?」
「なんだ!?」
またも良い返事。
しかし何だ? って。呼べといったのは貴方の方なのに。
そんな態度をとられても、こちらには覚えがない。
大体、こんなに目立つ容姿をしている人と接触したのなら、忘れないと思う。
少しの申し訳なさを感じて言うと、レジェスは納得したように、ああ、そっか、と笑った。
「そっか。名前も変わっていて当たり前だよな。ええと、名前は?」
「変わって? あの、あたしサラなんて名前だったことないですけど」
「名前だったことが、あるんだ。名前、教えてくれないか?」
意味がわからない。あたし本人がないと言ってるのに。
「かさね、です。森瀬かさね」
「カサネ、か。いい名前だな」
名前を言えば、人違いだと分かってもらえるかと思ったのに、レジェスは満足そうに頷いただけだった。
「それで、カサネはいくつ? 幼くみえるけど」
「あ、と、十六です」
「十六? そうか、俺より年下、か」
呟いて、レジェスは何故だか頬を赤らめた。
「そっか、年下か。そうだろうと聞いてはいたけど、そっか。サラが年下、か」
違うと何度も言ったのに、またその名前。
『サラ』って、誰なんだろう? あたしに似てる、とか? でも、そんな単純な人違いとはちょっと違う気がする。
「……あの。レジェス、さん」
「レジィでいい。というか、そう呼んでくれ。さん、もいらないから。
なあ、ちょっと試しに呼んでくれないか」
少し楽しそうに乞われて、訳がわからないながら頷いた。
「え? あ、はい。あの、じゃあ、レジィ?」
「おう」
おずおずと名前を呼ぶと、レジィは大きな声で答えた。その顔は嬉しそうで、金の瞳がきらきらしている。
「もう一回呼んでくれないか?」
「はあ。レジィ?」
「なんだ!?」
またも良い返事。
しかし何だ? って。呼べといったのは貴方の方なのに。