午睡は香を纏いて
「あ、あの、あたしが名前を呼ぶの、何かおかしいですか?」

「何も? ただ、嬉しいんだ」


聞くと、レジィはへへ、と笑って、


「サラ、じゃないな。えーと、カサネに会えて嬉しいんだ。
カサネに名を呼ばれて、ただ嬉しいだけ」


と少し照れたように言った。

あたしが呼ぶと、嬉しい? 首を傾げた。


「あ、さっき何か言いかけてたよな? 何?」


不思議に思っていると、レジィが思い出したように言った。


「あ、そうだ。あの、ここはどこですか? あたしは学校帰りだったはずですよね。
それがどうしてこんなところに寝てたんですか? それに、貴方は一体誰?」


あの時、『お前が存在していた世界へ帰ろう』と言った。
その『世界』がここ?
あたしのいた世界って、何?
それに、あたしを連れてきた、あたしが名前を呼ぶだけで笑う貴方は誰?


聞きたいことは沢山あって。
だけど何から聞けばいいのか分からない。
とりあえず思いつくまま問うたあたしに、レジィはさっきとは打って変わって、寂しそうな笑みを見せた。


「やっぱり、何も覚えてないか?」

「あ、の……?」


その翳った顔に、言葉が詰まった。
どうして、そんな表情を浮かべるの。



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