午睡は香を纏いて
いつだったかカインが見せてくれた、この世界の地図を思い描いた。

アデライダ国が支配しているヘルベナ大陸は、世界地図で見てみれば意外にも小さなものだった。
カナシス海を挟んで位置するハイナムトス大陸はその数倍は大きく、しかもその全容は途中で切れており。
不思議に思って訊けば、そこから先は地図を起こせない未開の地なのらしい。どんだけ広いのかは、分からないとのこと。
というよりハイナムトス大陸だけでなく、世界全体がまだ正確に把握されていないのだそうだ。

地球儀や微細な世界地図を見慣れていたせいか、最初は少し不思議な感じがした。
世界っていうのは、全てが明確になっていることが当たり前だと思っていたから。

でもどうしてだか、不確かなほうが世界は大きな気がするのは、何故なんだろう。

あたしの説明に、セルファが満足したように頷いた。


「そう。カインの生徒って優秀だなー。
港があるお陰で、ブランカは自国のみならず、他国の人や物も溢れてるんだ。
ま、だからこそ王都がそこに置かれたわけなんだけどね。
これもカインから聞いた?
この国の創成王と言われるリアヌ王は、元々は他国の者らしい。航海中にヘルベナ大陸を発見し、移り住んだんだって」

「あ、それは初耳」

「それなら、続きを話そうか。
分かりやすいように、アデライダの子供が多分一番最初に聞く昔語をしてやるよ。
むかーしむかーし、リアヌという強い巫力を持った若者がおりました」


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