午睡は香を纏いて
「は……っ、ぁ。後で説明、する」


乱れた前髪を乱暴に掻きあげて、カインは外を窺った。
もう悲鳴は聞こえてこないようだ。


「おや。懐かしい顔じゃないのさ」


背中にハスキーな声がかかった。


「マダム・シルヴェーヌ、久しぶり。今日、部屋空いてる?」


ふう、と息をついたセルファがあたしの後ろに話しかける。
振り返ると、髪を高く結い上げた女の人が立っていた。

グラマラスな体つきで、その起伏に富んだラインがよく分かる紫色のタイトドレスを身に纏っている。
艶のある黒髪は、頭のてっぺんで二個重ねのお団子になっている。簪のような赤い髪飾りがお団子に刺さっている、少し変わった髪形。
でも、彫りの深い個性的な顔立ちにはよく似合っている。

しかし、年齢はいくつくらいだろう。
ちょっと見た目で判断できそうにない。三十、いや四十代?


「空いてるとも。全員同じ部屋に押し込んで、いいのかい?」


マダム・シルヴェーヌと呼ばれた女の人は、ジーノさんが愛用している煙管とよく似たものを手にしていた。 
深紅の口紅を塗った唇から、煙を細長く吐き出す。


「同室で構わないが、二部屋続きがいい。用意できるだろうか、マダム?」


外を窺っていたカインが聞いた。
その顔をみたシルヴェーヌさんがくすりと笑う。


「おや、あんたいい男だね。いいよ、用意してあげる。
それにしてもセルファ、あんた生きてたんだねえ。死んだんじゃないかと心配してたもんさ」

「そりゃどーも」
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