午睡は香を纏いて
手近にあった椅子に腰掛けながら、セルファが言った。ふう、と一息ついて、あたしにも椅子を寄越してくれた。
それにお礼を言って座る。


「ふうん、こっちは可愛らしい坊や、かい。変わった取り合わせだねえ」


シルヴェーヌさんがあたしの顔を覗きこんで、愉快そうに濃茶の瞳を揺らした。
煙管を持っていない方の手で、頬を撫でられると、ふわりと、ケイルの香りがした。しかしジーノさんのそれと、葉っぱの種類が違うようだ。
こちらは麝香のような濃密な甘い匂い。


「坊や、名前は? もう成人の儀は済ませてるのかい?」


色気が視覚で確認できそうだ。赤い唇が魅惑的に動く。


「え、ええと名前はその、えっと、カ」

「名前はユーマ。オレの弟子だよ。そっちのも弟子で、ゼフ。今は諸国回って色んな職人に会ってるんだ」


シルヴェーヌさんの放つ色香に圧倒されていると、セルファが助け舟を出してくれた。


「ふうん、弟子、ねえ。ま、いいけど」


ふい、とあたしから離れて、シルヴェーヌさんは奥へと向かった。


「今はまだ酒は出せないんだ。水でいいかい?」

「ああ、ありがとう」


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