午睡は香を纏いて
「いや、そうは言ってないけど」

「じゃあ、教えて?」


いつもは色々教えてくれるのに。今回はどうして渋るんだろう。
疑問に思いつつ、まだ躊躇した様子のカインを見つめると、セルファが口を開いた。


「説明してやれよ。知らないままでここから出られるとは限らない。それに、無知が危険を招くことだってある」

「……確かに、な。わかった。説明しよう、カサネ。この街で起こっていることを」

「うん、お願いします」


どうしてカインがすんなり教えてくれなかったのか。
いつもの授業の延長、そんな感覚で説明を求めていたあたしは、そこを深く考えていなかった。


重い口を開いたカインの話は、心の準備の足りなかったあたしに、衝撃を与えた。

どうして二人が躊躇ったのか、教えようとしなかったのか。
それをあたしが理解したのは、すぐ後のことだった。




「さっきのは、リレトの命珠の為に、人が命を奪われた、断末魔の声だ」




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