午睡は香を纏いて
『カイン、キツいぞ』

『う、ううん。いいの、セルファ。わかった、ここにいる』


セルファが咎めたが、慌てて止めた。


『ご、ごめんなさい。ここにいます』


ぺこんと頭を下げた。


『……じゃあ、行ってくるね、カサネ』

『ん。行ってらっしゃい』


出窓から、建物を出ていく二人を見送った。それからほどなくして、遠くから絶叫が聞こえた。

ここへ来たときと同じ、人のそれとは思えない悲鳴。
命を刈られている人が今まさにいるという、証明。

二人は大丈夫だろうか。無事でいますように。


恐怖のあまり、目に涙が滲む。耳を塞いで、奥の部屋へ駆け込んだ。

固い枕に顔を押し付けて、ひいひいと情けなく泣いた。
怖い。怖い。


ああ、あたしって本当に役立たずだ。
カインの言う通り、一緒に行ったとしても何の役にも立たなかっただろう。

ううん、それどころか足手まといだ。
カインはきっと気がついていたんだ。
『一緒に探しに行く』と言ったあたしの手が震えていたのを。
莉亜を心配する気持ちを上回りそうなほどの、恐怖心を。
だからこそ、あんな言い方で諌めたのだ。
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