午睡は香を纏いて
咄嗟にカインの顔を思い出して、慌ててそれを打ち消した。
きっと数日前のことがあったからだろうけど、だからって愛情とかそんな言葉に反応してしまうなんて。
つい声が大きくなってしまったあたしに、占い師はまた忍び笑いを洩らした。


「素直な子ね。でも、何かを求めるのは人の性で、別段おかしなことじゃないわ。
それに、貴方は本来手にしているはずだったものを望んでいるのだから、殊更のこと」

「手にしているはずだった、もの?」

「そう。奪われたもの、といったほうがいいのかしら。さあ、そろそろお座りなさいな。私はずっと貴方を待っていたのよ」


この人は、何かを知っているのだろうか。
含みのある言い方が気になって、まじまじと見つめてしまう。
しかし、ローブの向こうの人物像は全く掴めなかった。


「私は貴方の助けになれるわ。信じなさい、サラ」

「そ、その名前を何で!?」

何で知ってるの!? 反射的に声を荒げてしまう。
あたしがサラだなんて、オルガの人しか知らないはずなのに。じゃあこの人はオルガの関係者?
いや、そうだとしたら『カサネ』と呼ぶんじゃないだろうか。


「静かに。あまりに大きな声を出すと、外に洩れてしまうでしょう?」


綺麗な指を、す、と口元辺りに添えて言う。
確かに、騒ぎになってしまうのはよくない。ここはリレトの本拠地なのだ。


「座りなさい」
 次は、大人しく従った。背凭れが高く、華奢な猫足の椅子に腰掛け、向かい合った人を窺った。
深く被ったローブの中に、どんな人がいるのだろう。
あたしのことを、サラのことを知っているのはなぜ?
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