午睡は香を纏いて
リレトの手の者だったらどうしよう。いやでもあたしの助けになるって言ったし。
膝の上に乗せた手をもぞもぞと動かす。

ああ、カイン帰ってこないかな。セルファも。二人がいたら安心なのに。


「こちらを見て?」


つい、としなやかな動きで右手が動いた。妙に冷たい指先があたしの顎に微かに触れた。
ローブの隙間から、ろうそくの炎を映した瞳が見えた。
ゆらめく瞳と、しばし見つめ合った。
深い湖の底を窺うような錯覚に陥る。とぷんと沈んでしまいそうな、奇妙な感覚。


「……あ、あの?」


沈黙は長く、耐え切れずに言葉を発した。
このままこうしていると、心の奥底まで見透かされてしまうんじゃないだろうか。
そんな不安さえ覚えてしまう。

おずおずと視線を逸らすと、ふ、と息を吐く気配がした。


「できることならどうにかしたかったけど……命珠は、離れそうにないわね」

「え……!?」

「いくつかの術の残滓が見えた。古文書レベルのものまで試したようね。
一等神武官の努力は評価したいけど、全て無駄だったようね」


独りごちるように呟く目前の人を、思わず凝視してしまった。
体の一部に触れ、視線を合わせるだけでそんなことまで分かるだなんて、それってカインと同じくらいの巫力があるってことなんじゃないだろうか。

え、でもおかしくない?

確か、巫力のある人は神殿入りしているはずで、街中にいるものじゃないって話だった。
なのにどうしてこの人はこんな所にいて、占い師なんてやってるの?
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