午睡は香を纏いて
まじまじと見ていると、指先が顎から離れた。


「ふふ、驚いた? これくらいのことなら、分かるの。もっと驚かせるなら、私は今日、貴方がここに来るのが分かってたのよ」

「分かって、た? それ、どういうことですか?」

「私には先読みの才がある、ということよ」


先読み? でもそれは……。


「でも、それはできないって聞きました。神しか持たない力だろうって」

「そうね、そう呼ばれる力ね。でも、実際に私は貴方が今日ここに来るということを知っていたわ。命珠を抱えた、転生後の巫女姫がここに訪れることを」

「…………っ!」


どういうことなのだろう。
あるはずのない力だと教わったのに、それを持つと言う人がこうしてあたしの目の前にいる。
あたしがこの宿に泊まるという情報をどこかで手に入れた? でも、どうやって? あたし本人ですら、数時間前に知ったことなのに。

しかし、先読みと言う力なのかは分からないが、何かしらの力を持っているのは確かだ。

カインがあたしに施した術には、消失した古代文字で書かれた、化石レベルの書物を読み解いたものがあるとカインの口から聞いたことがあった。

触れただけでそれが分かるなんて、ただの占い師であるはずがない。


「貴方が知りたいことは、次に会えたときに話してあげる。本題に入りましょう。
私は今日、貴方に会うためにここに来たの。
貴方がこれから出会うことになる災厄を、ほんの少し逸らすために」

「災厄? あの、それを教えてくれるって言うんですか?」
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