午睡は香を纏いて
「あら? これが対珠だって、よく分かったわね」


面白そうに言って、教えは誤ってないのね、と続けた。


「魂に刻まれる、なんて嘘かと思ってた」

「え?」

「いいえ、なにも。そう、これは対珠よ。でも、割れているわけではないのだけれど」

「そうなんですか?」


あたしの胸元にある対珠は綺麗な球形だし、対珠というのは球形なのだと思っていた。
以前、カインも完全な球体に近いほうがいい、というようなことを言っていたし。
しかし、実際には色んな形があるものなのかもしれない。


「この対珠に関しては、これが正しい形なのよ。
いい? これをずっと身につけておきなさい。絶対に手放してはだめ。わかった?」


す、と対珠を押しやられたので、おずおずと摘み上げた。
色合いは、あたしの持っているものとやはりよく似ている。
透明感のある鮮やかな赤で、中央にいくにつれて色が濃くなっているところも同じだ。
ただ、あるべきはずの半分が、ばさりとなくなっている。


「櫂、にこれがなるんですか?」

「信じれば、ね。そしてあなたが岸に辿り着いたときにはきっと、望むものを手に入れられるはずよ」

「……ええ、と。じゃあ、あの、頂きます」


じ、と見つめられているのを感じながら、ベストの胸ポケットにそれを押し込んだ。布越しにふくらみを確認して目の前の人を見る。
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