午睡は香を纏いて
「ユーマさま? お部屋までついて行きましょうか?」

「あ、いえ……、平気、ですけど」

「では、こちらへどうぞ。足元にお気をつけて」


シルさんに引かれるようにして、喧騒の酒場に戻った。
そこは変わらずケイルの煙とお酒の匂いが充満しており、女の子たちは忙しそうに給仕をしている。

今まで自分が身を置いていた空間とは全く違う、ごちゃごちゃした空気に一瞬立ち竦んでしまった。

さっきのあの人との会話は一体何だったんだろう。
あの空間とここは本当に一続きだったのだろうか。


「あの? どうかなさいましたか?」

「あ……いえ」


ここにいても仕方ない。部屋に戻ろう。二人が戻ってきていれば、今のこの話をして、意見を聞いてみよう。
お部屋まで付き添いましょう、と言うシルさんに従って、部屋に戻ろうとした。


「ん? どうかなさいましたか、ユーマさま」


二階へ向かう階段の下で、酒場を振り返っていると、不思議そうに訊かれた。


「あ、の……、どうしてみんな笑ってるんでしょうか?」


どうしても、納得がいかない。こんな状況で、笑ってお酒を飲める心境が分からない。
見上げたシルさんは、眉を下げて、ふ、と笑った。


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