午睡は香を纏いて
少し考え込むように口を閉じたシルヴェーヌさんだったが、ひょいとあたしの手首を掴んだ。


「それならアンタ、暇なんだろう? 少しアタシに付き合いなよ」

「え? え?」

「さあ、こっちだよ」


断る余地など一切なく、ぐいぐいと店の奥に引かれていった。


「さあ、入んな」


空の酒樽が積み重なった店の裏口を抜けたところに、小屋があった。
周囲には枠が外れてバラけた樽や、足が折れたテーブルなどが無造作に置かれている、倉庫のような古びた小さな建物だ。

店にあったランプを持ってきていたシルヴェーヌさんが、ぼろぼろのドアを引いて、中を差し示した。

こ、ここに何かあるの? 真っ暗だし、よく見えないんだけど。


「さあ、早く入んな」

「は、はい」


押されるようにして、中に入った。シルヴェーヌさんが後に続き、ガタンとドアを閉めた。
ランプの灯りで、室内がようやく見渡せた。


「あ、あれ?」


そこは外観からは想像できないような、奇麗に整えられた部屋だった。


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