午睡は香を纏いて
「……っ! は、はい!」


恐ろしい言葉に、背筋を伸ばした。そうだ、ここはリレトのいる街なんだ。いくら安全だと言われたからって、気を抜いちゃダメだ。


「こんな普通の子をどうしてまあ、セルファたちは連れてきたんだろうねえ」


あたしが緊張したのを見てとったらしい、シルヴェーヌさんがくすりと笑い、続けて不思議そうに呟いた。


「連れてこなくちゃいけなかった、っていうけど、さてどういうことなんだか」


小瓶の液体は、お酒らしい。甘い香りが、あたしの鼻先まで漂ってきた。


「え、ええと、その」


あたしのことを話したほうがいいのだろうか。いや、黙っておいたほうが?
言葉を捜していると、言わなくっていいんだよ、と答えをくれた。


「アタシが敵だったらどうすんだい? その話がもし重要だったら大変なことになるよ? 味方だと見極めきれてない者においそれと情報を漏らすもんじゃないのさ。
今のはアタシの独り言だったんだから、気にしないでおくれな」

「で、でもセルファがシルヴェーヌさんはいい人だ、って……」

「それは有難いねえ。でも、あいつとは三年ぶりに再会したんだ。長い時間だから、敵に変わってることもあるかもしれないだろう?」


悪戯っぽく笑ってから、グラスに半分ほど満たしたお酒を綺麗な喉を露にしてぐい、と呷った。
飲むかい、と訊かれて首を振って断ると、残念そうに肩を竦めた。


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