午睡は香を纏いて
「まあいいか。アタシが知ってることなんて、ほんの少しだしね。
だからさ、あんたの望む話はしてやれないかもしれないよ?」

「それでもいいです。些細なことでも!」


顔を上げて、瞳を真っ直ぐにみると、シルヴェーヌさんは思い出すように、視線を遠くに彷徨わせた。


「もう三年前、になるかねえ。大神武官とその補佐官の命を狙った賊が、夜中にヘルベナ神殿に侵入した日のことさ。
あの日はそりゃあもう、すごい騒ぎだったよ。神殿から火柱は上がるわ、街の中は神武団から国家騎士団まで駆け回ってるわでね。

アタシはいつものようにここで酔客の相手をしてたんだけど、酷くなる一方の騒ぎに野次馬根性が湧いちまってさ。店の屋上に出て、様子を眺めてたんだ」


三年前というと、サラが命珠を抱えて死んだ年だ、とすぐに気付いた。
補佐官―リレト―を狙った賊、というのは、それは命珠の破壊を試みたサラたちということでいいのだろうか。
その際に怪我を負った、そういうことなの?

サラは神殿の奥で命珠に喰われて死んだのだったっけ。
その場にはレジィやカインたちもいて、リレトも現れたと。

ここに来た当初にレジィから聞いた話を思い出す。
そういえばその時、サラの死後、彼らがどうやって神殿から脱出したのかは聞いていなかったんだ。
敵の本拠地の、しかも深層部から、一体どうやって逃げ出したのだろう。


「その一年前にも、似たような騒ぎがあってさ。その時は巫女姫サラ様が賊に拉致されて、惨殺されるっていう恐ろしい結末を迎えたんだよ。
今回はどうなっちまうんだろうってヒヤヒヤしたね」

邑を潰されたレジィが、一番最初にリレトの命を狙ったときか。
そこでサラに出会い、助けられて、カインの術で逃げ出したという。



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