午睡は香を纏いて
「しかしまあ、大神武官や補佐官が殺されるってんなら、よかったんだけどねえ。
あの時には既に民衆狩りは始まってたし、奴等をどうにかしてくれるってんなら、是非ともお願いしたいところだったよ」
皮肉に言い捨て、くつりと笑った。
「しかしそう上手くはいかないもんさね。賊は捕らえられ、その場で殺されたそうだ。
騒ぎも数刻ほどで落ち着いたんだよ。
屋上にいたアタシも、見物は止めて店に戻ろうとした。その時にね、裏手、この小屋の前でごそごそやってる影をみつけたのさ。
すぐさま下に降りて、様子を窺ったんだけど、そこにいたのは深傷を負った犬を抱えたセルファだった」
「セルファ、ですか……?」
「そう。あいつはウチの常連だったからね。この小屋のことも、アタシの性格もよく知っていたし、隠れるには打って付けだと思ったんだろうねえ。お陰で大変だったよ」
シルヴェーヌさんが見つけたときにはレジィは血まみれで、意識もなかったそうだ。
抱えたセルファも全身に血を浴びており、それはレジィの血だけではなかった。
シルヴェーヌさんは知り合いだという闇医者を呼び、二人を診てもらった。
「二人とも傷だらけだったけど、あいつのほうが酷かった。命を奪う傷だって医者でもないアタシにもよくわかったよ。
中でも、背中に大きな太刀傷が一つあって、あれが致命傷になりかねなかった。
ばくりと割れてるもんだから縫わなきゃならなかったんだけど、麻酔薬もなけりゃ、術が使える巫女も神官もいない。
だからさ、アンタの後ろのそのベッドで、何の処置もないまま傷を縫合したのさ。
アタシとセルファで手足を押さえつけて、口には布を咬ませてねえ。
声を上げたら、外でうろうろしてる神武団たちに見つかっちまいかねないだろう?
だけどあいつは強くてね、低い唸り声を一つ漏らしただけだったよ。まあ、噛み締めすぎて、布が真っ赤に染まったけどね」
思わず背後のベッドを振り返った。
揺れるランプの灯りの下での、淡々としたシルヴェーヌさんの語り口はその時の光景を再現するかのようだった。今まさにレジィが苦しんでいるような気がして、身震いした。
あの時には既に民衆狩りは始まってたし、奴等をどうにかしてくれるってんなら、是非ともお願いしたいところだったよ」
皮肉に言い捨て、くつりと笑った。
「しかしそう上手くはいかないもんさね。賊は捕らえられ、その場で殺されたそうだ。
騒ぎも数刻ほどで落ち着いたんだよ。
屋上にいたアタシも、見物は止めて店に戻ろうとした。その時にね、裏手、この小屋の前でごそごそやってる影をみつけたのさ。
すぐさま下に降りて、様子を窺ったんだけど、そこにいたのは深傷を負った犬を抱えたセルファだった」
「セルファ、ですか……?」
「そう。あいつはウチの常連だったからね。この小屋のことも、アタシの性格もよく知っていたし、隠れるには打って付けだと思ったんだろうねえ。お陰で大変だったよ」
シルヴェーヌさんが見つけたときにはレジィは血まみれで、意識もなかったそうだ。
抱えたセルファも全身に血を浴びており、それはレジィの血だけではなかった。
シルヴェーヌさんは知り合いだという闇医者を呼び、二人を診てもらった。
「二人とも傷だらけだったけど、あいつのほうが酷かった。命を奪う傷だって医者でもないアタシにもよくわかったよ。
中でも、背中に大きな太刀傷が一つあって、あれが致命傷になりかねなかった。
ばくりと割れてるもんだから縫わなきゃならなかったんだけど、麻酔薬もなけりゃ、術が使える巫女も神官もいない。
だからさ、アンタの後ろのそのベッドで、何の処置もないまま傷を縫合したのさ。
アタシとセルファで手足を押さえつけて、口には布を咬ませてねえ。
声を上げたら、外でうろうろしてる神武団たちに見つかっちまいかねないだろう?
だけどあいつは強くてね、低い唸り声を一つ漏らしただけだったよ。まあ、噛み締めすぎて、布が真っ赤に染まったけどね」
思わず背後のベッドを振り返った。
揺れるランプの灯りの下での、淡々としたシルヴェーヌさんの語り口はその時の光景を再現するかのようだった。今まさにレジィが苦しんでいるような気がして、身震いした。