午睡は香を纏いて
と、ドアに手をかけたシルヴェーヌさんの動きが止まった。
背中を向けたまま、「ねえ」と呼びかけられる。


「頼みを一つ、きいておくれでないかい?」

「頼み、ですか? できることなら、しますけど」

「なあに、簡単な伝言さ。あの犬にね。
まだ動くつもりでいるというのなら、奥通りのシルヴェーヌが、いや奥通りの民が手を貸したい、と」

「え……、あ……っ!」


どういう意味?
犬……レジィが動くつもりって?
頭で言葉を反芻して、ようやく分かった。

レジィが、オルガがリレト討伐に再び動き出すのならば手を貸してくれる、そういうこと?


「生死の境から戻ってきたってことは、活路を見いだせたということかもしれない。あいつは、この街が、国が助かる可能性を、知っているのかもしれない」


自らに言い聞かせるように呟いた、振り返らない背中を見つめる。


もし、あたしがサラの持っていた何かを手に入れることができたら、それがリレトを倒す可能性となる、と言えるはずだ。

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