午睡は香を纏いて
「可能性は、あります」


断言したあたしに、シルヴェーヌさんの肩が揺れた。


「そのために今、セルファやゼフが動いています。可能性はあります」


リレトのいる神殿は、神武団を抱える大きな敵だ。
オルガ邑に賛同してくれる人たちがいるというのなら、願ってもないことではないだろうか。
しかも、ここは神殿のすぐ近くだ。遠く離れたオルガにはできないことも、できるのでは。

でも、どうしてそんなことを急に?


「四年前に山賊討伐の話が出たとき、反対した者は少なかった。
というより、山中の族のことなんて、誰も気に留めちゃいなかったんだ。
でも、それがいけなかった。人の命を軽んずれば、己の命も軽くなる。
彼らが許してくれるのなら、手を貸したいのさ」


あたしの沈黙を察したのか、シルヴェーヌさんが言葉を重ねた。


「いや、これはもうアタシたちが動くべき問題なんだ。だから、そうさね、手を組んでくれないか、と言ったほうがいいね」

「手を組む、ですか」

「そう。命を搾取されているアタシたちと共に、神殿を……討たないかと」
 シルヴェーヌさんの言葉に嘘はない。

「はい。必ず伝えます」


はっきり答えると、頼むよ、と安堵したような声が返ってきた。




「なんだ。二人とも帰ってきてないようだね」


灯りのついた部屋は人気がなくて、中を覗きこんだシルヴェーヌさんがため息をついた。


「大丈夫、でしょうか」

「大丈夫だろ。二人ともしぶとそうな顔してるし。じゃあ、おやすみ」


顔つきの問題なのかな、と思うようなことを言って、シルヴェーヌさんは立ち去った。


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