午睡は香を纏いて
腰の差し物も、セルファのそれと違い細かい彫細工が施されており、宝石まで嵌められている。

この世界の騎士団の団服の知識などは一切ないあたしだが、カインの方が身分が上だろうと見当がついた。

そして何よりも大きな変化が、カインがあの長い前髪をオールバックに流していることだった。
いつもは半分以上隠れた顔が露になっており、顔の造りを隠すのは焦茶色の眼帯のみ。


「声がしたから起きてると判断して中に入ったんだけど、悪かったのか」


頭から足先までまじまじと見ていると、カインが不服そうに顔を背けた。
綺麗な顔が歪むのが、いつも以上に見て取れた。


「ち、違。そういうことじゃなくて!
ええと、あの、二人ともそのいでたちはどういうこと?」

「今日はヘヴェナ家に行くんだっただろう。その為の支度だ」


それは分かっているけど、だからってどうしてそんな格好を?


「オルガからサラの生まれ変わりを連れてきましたー、なんて言えないだろ。
オレたちは、異国の巫女姫の観光に付き従う国家騎士団員ってわけさ」 


首を傾げていたあたしの疑問が分かったのか、セルファが教えてくれた。
それに続いて、カインが説明してくれた。


今日の設定は、こういうことらしい。

あたしは南に位置する小国、ゼユーダの新しい巫女姫で、親交のあるアデライダ国の国王に、就任の挨拶に来た。
ヘルベナ神殿なども訪れたあたしは、名を馳せた巫女姫サラにいたく興味を持ち、サラの生家を訪問したいと熱望。
それを叶えるため、今日ヘヴェナ家に非公式に伺う運びとなった、と。


そして、カインとセルファは、国の賓客扱いであるあたしに護衛として付けられた国家騎士団員、なのだそうだ。


「な、なんか大掛かり、っていうか……」


国の賓客だとか、国家騎士団だとか、縁のなかった言葉にたじろいでしまう。
もっと簡単に会えるものなのかと思っていたけど、どうやら違うらしい。
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