午睡は香を纏いて
「ブランカからここまで、どれくらいかかる?」

「鷹でしたら半日です。しかし傷を負った上ですので……、一日、といったところでしょうか」

「カサネを連れてきてすぐ、か。兵、向けてるだろうな」

「はい。しかし、場所が特定されているとは限りません。多少の猶予はあるかと」

「いや、こうなれば、転送術が完全じゃなかったことが気になる。
あれがリレトの仕業だとしたら、おおよそは把握していると考えていいだろう。
今頃この辺りを目指して追っ手が向かってきているはずだ」


レジィは口元に手をあてて、考えこむように視線を彷徨わせた。
けれどそれはほんの一瞬のことで、すぐに指示を飛ばした。


「すぐにここを発つ。馬を二頭。それと、ユーマの服を一揃え頼む」

「は。しかし、ユーマのもの、とは?」

「カサネに着せる」

「は……、いや、なるほど。すぐにライラに用意させます」

「頼む。カサネ!」


緊迫した二人の様子をただ見ているしかなかったあたしは、いきなり名前を呼ばれたことにびくりとなった。


「は、はいっ」

「ここを発つことになった。ライラが持ってくる衣服に着替えておいてくれ。すぐ戻る。
行くぞ、ゼフ」

「はっ」


厳しい表情のレジィはゼフさんを従えるようにして小屋を出て行った。


「え、えと……」


一人きりになった小屋で、あたしはうろうろと歩き回った。
 


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