午睡は香を纏いて
午後の日差しがぽかぽかと心地いい。頬を柔らかな風が撫でた。
それはあたしの後ろに流れ、木々の葉をさやさやと揺らす。

耳を覆いたくなるようなレジィの話と、今この時間が繋がっているなんて、嘘みたいだ。


「サラの体が、灰に変わり果てた頃、リレトが現れた。
『これで禁術を完全なものにできた』
そう言って笑ったよ。

『サラの魂はこれから、先の世の記憶を全て失って後、転生する。
その魂に僕の命珠を抱えたまま。幾重にも重なって存在する広大な世界から、たった一人を見つけ探さなければ……、僕は殺せない』とな。

リレトは俺たちがサラを連れて侵入してくることが分かっていて、それをわざと受け入れたんだ。
サラの魂を命珠の入れ物にし、俺たちの手の届かない場所へ送る為に。
あいつは、俺たちがサラを手にかけられないことすら、承知していたんだ」


多くの人の命を必要とする珠。それを抱えた魂が転生。


「……あたしがサラさんだ、って、言ったよね?」

ずっと、首元の珠を握っていた。その手がじっとりと汗ばんでいた。


「ああ。カサネは、命珠を抱えてる」


あたしの中に、たくさんの命を欲する珠がある?


「サラが死んでから、リレトは神殿を支配した。
あいつをどうにかできる力を持つ神官はいないからな。
神殿の抱える武力も、神殿の権威も、そして不老不死の体も、全てリレトは手にしている。
もう誰にも倒せない存在になってしまったんだ。
だからこの世界にはカサネが必要で、俺が迎えに行ったんだ。
カサネの魂を命珠から解放して、今度こそ砕く。
そうすれば、リレトは死ぬ。リレトの為に誰も死ななくて済むようになるんだ」


よほど怯えた顔をしていたらしい。目を開けてこちらを見たレジィが慌てたように明るい声を出した。


「大丈夫だって。カサネは絶対にリレトに渡さないし、俺が守るから。それに、命珠はカインがどうにかする。カサネから引っぺがしてやるって」

「う……ん」


胸の奥が、締め付けられるように痛い。少しの息苦しさを感じるくらい。



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