午睡は香を纏いて
「ねえ。あたしの魂には目印がついてる、って言ったよね?」

「ん? ああ」

「その目印っていうのが、命珠のこと?」

「ああ。カインはそれを目標に、俺を転送した。その先にカサネがいたんだ」


レジィは、『サラ』を見間違えないと言った。
ならば、やはりあたしは『サラ』なのだろうか。

ううん。ここに連れて来られ、そして追われている。
共にいる人は、あたしをサラだと言い、あたしを守る為に寝ずに馬を駆っている。
もう、人違いだなんて言っていられないのかもしれない。
 
サラの記憶なんてないし、この世界に別段懐かしさを感じるわけでもない。
けれど、信じてみようと思う。
あたしが『サラ』であったのだと。
でも、信じるのだとしたら。

口にするのもおぞましい事実を思い、胸が一際痛んだ。


「レジィ。命珠っていうのは、人の命がないと、維持できないんでしょう?」

「あ、ああ」


笑顔を作ろうとしていたレジィの顔が曇った。


「じゃあ、サラが亡くなってからも、人はずっと殺されてたの?」

「……ああ」


ほんの少し言い躊躇った後の短い答えに、ぞくりとした。

あたしがサラだと言うならば、それは誰かの命を食べ続けているモノが、あたしの深いところにいるということなんだ。
気付かずに生きていたことが、幸せだったのかもしれないと思うくらいに、激しい嫌悪感が襲った。




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