午睡は香を纏いて
「う……っ」


吐き気がこみ上げてきて、げほげほとむせる。
寝転んでいたレジィが飛び起きて、あたしの丸めた背中に手を添えた。


「大丈夫か、カサネ!?」

「う……、う……ん」


気持ち悪い。
湖に駆け寄って、水で口を濯いだ。気付けのつもりで、顔も洗う。


「カサネ? 平気か?」


湖の縁に座り込んだあたしに、レジィが心配そうに声をかけた。


「ごめん、もう少し考えて話せばよかった。気分、悪いか?」

「ううん、平気。少し、びっくりしたって言うか……」


レジィが差し出してくれた布で、顔を拭う。
眉根を寄せた、ひどく申し訳なさそうな顔に、次はあたしが明るい声音を意識して言った。


「聞かなくちゃいけないことだから。レジィは悪くないよ。
それに、ここに連れてこられた理由も、自分の役割も、分かったし。
あたしは、これからどうすればいいの?」

「え? ああ、と。カインたちと合流して、それから命珠とカサネの魂を引き離す術を行う。
どんなことをするのかとか、俺、神官じゃないから詳しくわかんねーんだけど。
でも、大丈夫だから。カインはリレトなんかよりすげー神官だから」


カインという人に、命珠を取り除いてもらう。
自分の中にあるというそれが無くなるというのなら、願ったり叶ったりじゃないか。
少しほっとして、あたしはまだ眉間にシワを刻んだレジィに、気の抜けた笑みを向けた。


「それなら、よかった。じゃあ、早く行かないと、だね」

「おう。じゃあ、少し寝ろ。顔色、あんまりよくないからさ」


さっきの話で、顔色も変わってしまっていたらしい。
でも、あたしなんかよりレジィの方が休まないと。


「いいよ。レジィが休んだほうがいいから。ちょっとでも寝て?」

「俺は平気だって。カサネの方が辛いだろ? 乗りなれてないだろ、馬」


ぽんぽんとあたしの頭を撫でて、レジィは木陰を指差した。




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