午睡は香を纏いて
「あっちで寝ろ、な? カサネがバテたら、先進めねーしさ」

「でも」

「いいから」

「よくないよ」


あたしの顔色は一過性のもので、すぐに治まるはずだ。
レジィはあたしと違ってずっと休んでないんだから。


「いや、俺は大丈夫だって」

「そんなことないでしょ?」


むう、と見上げると、うわ、とレジィは頬を染めた。
かーっ、とか呟きながら、自分の額をべちんと叩く。
その大きな音にこちらが驚いた。


「な、なに?」

「いや、こんなときに不意打ち。やべえ。つーか最低、俺」

「不意打ち? 誰かいるのっ?」


咄嗟に腰を浮かせたあたしに、違う違う、と手で制して。


「あーと、じゃあ、ちょっとだけ寝ます、ハイ」


レジィは素直に言った。


「うん、そうして。あたし、ちゃんと周り見てるから」


二人とも寝てしまっては、見張りがいなくなっちゃうもんね。
幸いというべきか、話の衝撃のせいであたしの疲れは吹っ飛んでしまっていて。
ざわめきだった心は睡眠なんてとれるような状態ではない。

レジィに少しでも体を休めて欲しいし、安心してもらおうと思って強く言うと、再び大きな手の平があたしの頭にふわりとのった。


「ありがとな。よろしく、カサネ」


に、と笑われて、その笑顔に赤面してしまう。
今まで、こんな風に男の人に頭を撫でられたことなんてなかったし、
優しく笑いかけられることもなかった。

綺麗な金眼があたしに真っ直ぐに向けられていることも、何だかもじもじしてしまう。


「じゃ、じゃああたしあっちにいるね!」


早口で言って、逃げるようにレジィから離れた。




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