午睡は香を纏いて
   * * *


「ん……。うー……?」


首が痛くて目が覚めた。また、眠ってしまっていたらしい。
どれだけ図太いんだ、と自分に呆れながら、開くのを拒否している両目をどうにか開けた。


「あれ、もう夜?」


さっきまで空は赤く染まっていたはずなのに。
あたし、どれだけ寝ていたんだろう。
目を擦りながら、すっかり墨色に塗りつぶされた周囲を見渡した。


「わあ、すごい……!」


暗闇には何も見つけられなくて。次に何となしに空を仰ぐと、真っ暗な地面に反し、空には一面の星が瞬いていた。
 
小さな頃に、プラネタリウムを観に行ったことがある。
その人工の空と同じ、いや、それ以上の光の粒がある。


「起きたか?」


降ってきたレジィの声に、体を捻って顔を向ける。


「ねえ、星! すごくないっ?」

「あー、今日は雲もないし、確かにな」


見上げるレジィはごく当たり前のものを見るような顔をしている。


「あたし、こんなにたくさんの星見るの初めて」

「へえ。カサネのいた世界は、星は少なかったのか」

「うん。あたしの住んでいたところはね、少なかった」


遠くに小さな小さな粒がちょっぴりしか見えない、寂しい夜空を思い出した。
と、馬の歩みがゆっくりなことに気がついた。
頬にあたる夜風はいつものように荒くなくて、優しく撫でていくようだ。


「あ。もしかして、寝させようとしてくれたの?」


乱暴な揺れを経験してからは、のんびり闊歩する馬の振動は、ゆりかごのようなものに感じる。
首は少し痛むけれど、ぐっすり寝られたのは、レジィのお陰だったらしい。



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