午睡は香を纏いて
「カイン!」
絶望したあたしとは裏腹に、レジィが歓喜の声をあげた。
カイン、って……?
レジィの視線の先を追おうとしたその前に、大剣を構えなおした男の姿が塞がる。
馬の勢いまで乗せた剣の切っ先が、横殴りに振られる。
ああ、斬られる!
レジィの血に染まった腕にしがみついた。
次の瞬間に聞いたのは、あたしの断末魔の悲鳴でも、レジィのそれでもなく。
どさり、という何かが落下した音だった。
見れば、そこには乗り手を失って戸惑う馬の姿しかない。
え、さっきの人はどこに?
あたしが目を閉じたのは、ほんの一瞬だったはずなのに。
「ここにオルガの一族参る。我が長への剣を引き、立ち去るがいい」
凛とした声が、辺りに響いた。
それは乱れていたこの場の空気を、すう、と潮が引くように鎮めた。
「カサネ。援軍だ」
声の主を探して、きょろきょろとしているあたしに、レジィが指をさしてみせた。
なだらかに登り坂になっていた高みに、沢山の人影があった。朝日を背にしているせいか、こちらを見下ろしているその顔までは判別できない。
援軍ということは、助かったのだろうか。
「ふざけるな。逆賊どもが我ら神武団に何を言うか!」
呆然として、レジィが援軍と呼んだ人たちの姿を見ていると、怒声がした。
その声の主が思いの外近くにいて、たじろいだ。
周囲を窺えば、十数人の鉄鎧姿の男たちがいた。
皆、手に大剣を携えている。
ほ、本当に大丈夫なの? びくびくしながら、援軍に向かって声をあげた人を見た。
鉄仮面に覆われていてその表情は分からないけど、現れた集団に臆してないのは明らかだ。
他の人と違い、深紅のマントまで纏っているところを見ると、この追っ手たちのリーダーなのかもしれない。
馬を数歩進ませて、鉄仮面は続けた。
絶望したあたしとは裏腹に、レジィが歓喜の声をあげた。
カイン、って……?
レジィの視線の先を追おうとしたその前に、大剣を構えなおした男の姿が塞がる。
馬の勢いまで乗せた剣の切っ先が、横殴りに振られる。
ああ、斬られる!
レジィの血に染まった腕にしがみついた。
次の瞬間に聞いたのは、あたしの断末魔の悲鳴でも、レジィのそれでもなく。
どさり、という何かが落下した音だった。
見れば、そこには乗り手を失って戸惑う馬の姿しかない。
え、さっきの人はどこに?
あたしが目を閉じたのは、ほんの一瞬だったはずなのに。
「ここにオルガの一族参る。我が長への剣を引き、立ち去るがいい」
凛とした声が、辺りに響いた。
それは乱れていたこの場の空気を、すう、と潮が引くように鎮めた。
「カサネ。援軍だ」
声の主を探して、きょろきょろとしているあたしに、レジィが指をさしてみせた。
なだらかに登り坂になっていた高みに、沢山の人影があった。朝日を背にしているせいか、こちらを見下ろしているその顔までは判別できない。
援軍ということは、助かったのだろうか。
「ふざけるな。逆賊どもが我ら神武団に何を言うか!」
呆然として、レジィが援軍と呼んだ人たちの姿を見ていると、怒声がした。
その声の主が思いの外近くにいて、たじろいだ。
周囲を窺えば、十数人の鉄鎧姿の男たちがいた。
皆、手に大剣を携えている。
ほ、本当に大丈夫なの? びくびくしながら、援軍に向かって声をあげた人を見た。
鉄仮面に覆われていてその表情は分からないけど、現れた集団に臆してないのは明らかだ。
他の人と違い、深紅のマントまで纏っているところを見ると、この追っ手たちのリーダーなのかもしれない。
馬を数歩進ませて、鉄仮面は続けた。