午睡は香を纏いて
「ふうむ、サイズが合ってないね」

「はあ……」


サラは巨乳だったとみた。
胸元にできたドレープはデザインではなく、あるべきものが欠けているせいだろう。

呆然と己を見下ろすあたしの肩を、フーダさんが慰めるように叩いた。
多分、あたしが恨めしそうに胸元ばかり見ているからだ。

だって、悔やまれる。
一つくらい、あたしにだってサラに勝っているところがあってもよさそうなもんじゃないだろうか。


「ちょっと待っといで」


フーダさんは衝立の向こうに行ってしまい、ほんの少しして背の高い綺麗な男の人を連れて戻ってきた。
がっしりした肩幅や、露になっている腕が逞しいことで男の人だと分かるけど、体型を隠していたら女性と見間違えたかもしれない。

目を引くのは、碧眼の目尻だ。
左の目尻に、紫の花の紋様がある。刺青、だろうか。白い肌に咲いている花はすごく目立っている。
それに加え、ふわふわの綿飴みたいな金髪を、頭頂部で一つに纏め、紫の飾り紐で結わえている。金色の雲を頭に載せたその人は、手に大きな箱を抱えていた。


「紹介するよ、セルファだ。カサネの着ているその服を仕立てた男さ」

「あ……、初めまして」


胸元に余った布を掻き寄せて、頭を下げた。
セルファさんはそれに小さく会釈をして見せて、でも視線はあたしをじろじろと見回していた。


「後ろ向いて見せて」

「あ、はい」


後ろを向くと、背中にも同じ視線を感じる。と、ため息をついたのが分かった。


「ずいぶん貧相な体つきになったね、サラ」

「セルファ、今の名はカサネだと聞いたろ。それに、女の子に失礼なことお言いでないよ」

「ああ、そうだったっけ。だってさ、必要な肉までごっそりこそげてる。まあ、腰周りはそうでもないけど。
パヴェヌもあんな容姿は二度とは作れないんだねー」

「カサネの姿もかわいらしいじゃないか。愛嬌がある」

「親しみやすいとは、思うけどね。でもまあ、これ位のほうがサラより手の加えがいはあるかな」



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