白銀の翼~白銀の彫刻と金の瞳の乙女~
そう言ってタランは自分の右

腕の二の腕に触れた。そこに

は正方形の中を切り抜いたよ

うな赤黒い印があった。

その国の奴隷なら必ず右の二

の腕にその印がある。それは

奴隷の証なんだから。

熱く熱くした鉄ゴテを肌に押

し付けられる痛み以上に辛い

ものはないと思う。肉の焼け

る音と臭いは嫌いだ。この印

を押された時点で命を落とし

た者も少なくない。リセラだ

って今だって今でも時々ズキ

ッと痛むことがある。

ジャラと鎖が鳴る。ただでさ

え重い物なのに、これ以上重

い物はいらない。

自由が欲しくないと言ったら

嘘になる。けれどこれ以上現

実にならない。ことを夢見て

も無駄なだけだ。このまま行

けばいい。今日を明日を生き

ていくことをただ考えて自分

の終わりが来るのを待ってい

ればいい。
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