サクラ誘惑




その言葉に、一瞬ピクリとする私。


「それはサクラ色、かな?」


男の人の声なんて無視して、そのまま歩き続ける。


「わざわざ染めたの?」


「染めてない、自毛」


「へーずいぶんと綺麗な色に染まったなぁ」


そう言う男の人は、遠回しになにか言いたそうで。


「何が言いたいの?」


私は少し低い声でそう言った。


だって完全にこの人、自毛だって信じてない!


「これは自毛なの!お父さんもお母さんも日本人で、少し色素は薄いけど、私みたいにサクラ色じゃない!

私だってなんでそんな親からこんなサクラ色の子が生まれたのか聞きたいよ!」




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