サクラ誘惑
なんて。無理に決まってるけど。
「お待たせ!」
あんず飴を持ってにこにこしている奈美を見て、ふっと口が緩む。
今日はさとるのことは考えないようにしよ。
会いたくなるし、ね。
「私…好きな人出来たの」
歩いていたら、ぽつりと奈美が言った。
「…え?」
いきなりの証言に思わず歩いていた足を止める私。
「その人…誰?」
私が聞くと、少し前に行ってた奈美がくるりと振り替えった。
「あっち行こうよ」
ベンチに座って、なんとなく星空を見る。
「同じクラスの、谷田部くん」
谷田部(ヤタベ)くん…か。