サクラ誘惑
ふらふらと屋台を歩いていると、
「あ…」
不意に奈美が小さく声を上げた。
「あ、」
前から来た男子二人も私たちを見て声を上げて、近付いてきた。
「田辺たちも来てたんだ」
田辺と呼ばれた奈美は、少し俯き気味でこう言った。
「や、谷田部くんも…来てたんだ」
にっこり笑うこの男子が谷田部くんなんだ、と納得する。
それにしても、なんて偶然なんだろう。
「こんばんは、佐原さん」
谷田部くんの隣にいた男子に声を掛けられはっとする。
「こんばんは…」
えっと…誰だっけ。
なんて正直思いながらも、一応返事をする。