黒き藥師と久遠の花【完】
 いずみが頬を赤くして、恥ずかしそうに頬を掻く。
 髪や目の色が変わっても、幼い頃に見ていた姉の中身は変わっていない。
 それが嬉しくて、みなもの口端が上がる。

(そういえば、姉さんは昔からしっかりしているように見えて、意外とそそっかしいところがあったな)

 みなもは懐に手を持っていくと、仕舞っていた手紙を取り出す。

 きっと優しい心根も、人を気遣う優しさも変わっていないだろう。
 だから、これを渡せば自分の願いが伝わると思いたかった。

「姉さん、お願いがあるんだ。この手紙をイヴァン様にお渡しして欲しいんだ
わざわざ俺と話すためにここへいらっしゃったから、そのお礼を伝えたくて」

 まずは一通だけ差し出すと、いずみは「分かったわ」と両手で丁寧に受け取る。
 そして、みなもの手に残ったもう一通の手紙を、いずみは指さした。

「そっちの手紙は誰に渡せばいいのかしら?」

「これは姉さんへの手紙だよ。こうして顔を合わせると嬉しくて、話したいことが頭から抜けちゃうんだ。だから手紙に書いてきたんだよ」

 いずみの目に優しい色が宿り、少し瞳を潤ませる。

「そうなの……今、読んでもいい?」

「うん。そのつもりで持って来たんだ」

 同じように目を潤ませながら、みなもはもう一通の手紙と、服のポケットから取り出した銀の紙切りナイフを差し出す。
 それらを受け取ると、いずみはしばらく眺めてから封を開けた。

 いずみの目が手紙の字を追っていく。
 最初の一枚は、嬉しそうに目を細めて読んでいた。

 しかし二枚目を読み始めた途端、いずみの顔から笑みが消えていった。

 読み終えた後、いずみは頭を上げる。
 その顔は血の気が引き、肌の白さが増していた。

< 164 / 380 >

この作品をシェア

pagetop