黒き藥師と久遠の花【完】
しばらく談笑を続けた後、ナウムがソファーから立ち上がった。
「私はこれで失礼します。イヴァン様の了承も得ていますから、今日はみなもと心ゆくまでお話し下さい」
いずみはナウムを見上げると、穏やかに微笑む。その眼差しは揺るぎのない信頼を向けていた。
「ナウムにはいつも支えてもらってばかりだわ。いつもありがとう」
自分の知らない間に作られた、二人の繋がり。
それを見せつけられた気がして、姉が遠くにいるように感じてしまう。
みなもはいずみと一緒に、部屋を出て行くナウムを見送る。
淡い寂しさと、姉の心を掴んでいるナウムへの嫉妬で、胸が疼いた。
ナウムの足音が遠ざかった後、いずみがフフッと笑った。
「ねえ。みなもはナウムのこと、どう思っているの?」
急に予期せぬことを言われて、みなもの目がわずかに泳ぐ。
「どうって――」
「あの人に言われたわ。みなもが許すなら、伴侶として迎えたいって」
ナウムの伴侶……ありえない。想像すらしたくない。
嘘でも「嬉しい」なんて言いたくない。
しかし、あからさまに拒否をして、姉の傷つく顔も見たくない。
みなもが答えに詰まっていると、いずみは不思議そうに目を瞬かせて小首を傾げた。
「あら、嬉しくないの? 小さい頃『大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになる』って、何度も言ってたのに」
……なんて見る目がないんだ、子供の頃の自分は。
この身に覚えのない過去を消し去りたいと思いながら、みなもはゆっくりと首を横に振った。
「俺もナウムも昔とは違うから、そう簡単には考えられないよ。まだバルディグへ来て日も浅いから」
「そうね、ちょっと焦り過ぎちゃったわ。貴女たちが一緒になってくれた嬉しいな、って思っていたから、つい――」
「私はこれで失礼します。イヴァン様の了承も得ていますから、今日はみなもと心ゆくまでお話し下さい」
いずみはナウムを見上げると、穏やかに微笑む。その眼差しは揺るぎのない信頼を向けていた。
「ナウムにはいつも支えてもらってばかりだわ。いつもありがとう」
自分の知らない間に作られた、二人の繋がり。
それを見せつけられた気がして、姉が遠くにいるように感じてしまう。
みなもはいずみと一緒に、部屋を出て行くナウムを見送る。
淡い寂しさと、姉の心を掴んでいるナウムへの嫉妬で、胸が疼いた。
ナウムの足音が遠ざかった後、いずみがフフッと笑った。
「ねえ。みなもはナウムのこと、どう思っているの?」
急に予期せぬことを言われて、みなもの目がわずかに泳ぐ。
「どうって――」
「あの人に言われたわ。みなもが許すなら、伴侶として迎えたいって」
ナウムの伴侶……ありえない。想像すらしたくない。
嘘でも「嬉しい」なんて言いたくない。
しかし、あからさまに拒否をして、姉の傷つく顔も見たくない。
みなもが答えに詰まっていると、いずみは不思議そうに目を瞬かせて小首を傾げた。
「あら、嬉しくないの? 小さい頃『大きくなったら、お兄ちゃんのお嫁さんになる』って、何度も言ってたのに」
……なんて見る目がないんだ、子供の頃の自分は。
この身に覚えのない過去を消し去りたいと思いながら、みなもはゆっくりと首を横に振った。
「俺もナウムも昔とは違うから、そう簡単には考えられないよ。まだバルディグへ来て日も浅いから」
「そうね、ちょっと焦り過ぎちゃったわ。貴女たちが一緒になってくれた嬉しいな、って思っていたから、つい――」