黒き藥師と久遠の花【完】
 いずみが今にも消え入りそうな声で尋ねてくる。
 
 やっぱり傷つけてしまったと、みなもは眉根を寄せた。

「そうだよ。そこに書いたことが俺の願い……本心だよ」

 どうにかして自分の願いを、直接いずみに伝えたかった。
 そのために、ずっと我慢してここへ居続けた。
 自分を犠牲にしてでも、姉を傷つけることになっても――。

 いずみは手を震わせながらソファーの上に手紙を置くと、硬い表情のままみなもを見据えた。


「私は『久遠の花』。貴女の言いたいことは分かるわ。でも今の私はバルディグの王妃……毒を作ることを止める訳にはいかないの」


 揺れながらも凛とした姉の声を聞きながら、みなもは目を閉じる。

 自分は『守り葉』。人を癒す『久遠の花』を守る者。
 そして一族の血と、知識、技術を守る者。
 ただ人を傷つけるためだけに力を使わない、という一族の願いと誇りを守る者。

 自分の願いは、これ以上は毒作りをさせないこと。
 二度と同じことが起きないよう、いずみから知識や技術を奪うこと。

 最後の『守り葉』として、血の繋がりを優先する訳にはいかなかった。
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