黒き藥師と久遠の花【完】
男たちが視線を泳がせ、互いの意思を探る。
しばらくして年長の男が息をつき、口を開いた。
「ここから二階に上がって、廊下を突き当たりまで向かえ。その後は――」
体の痺れが強くなり、彼は言いにくそうに言葉を区切りながら道を教えてくれる。
聞き終えた後、みなもは「分かりました」と言って彼らに背を向けると、足早に階段を駆け上がった。
二階に足を踏み入れ、後方から男たちが現れないことを確かめると、みなもは眼差しを強くして廊下の先を見た。
(……いずみ姉さん)
きっと会うのはこれが最後になるだろう。
記憶を奪われまいと激しく抵抗して、あの穏やかで優美な瞳に憎しみを宿し、こちらを見てくる――そんな姿を少し想像しただけで、泣きたくなってしまう。
こんな事態になっても、大好きな姉だという思いは変わらない。
胸の奥には、まだ一緒にいたいと願う気持ちも残っている。
それでも、大好きだからこそ自分が姉を止めなければ。
みなもは歯を食いしばり、残っていた未練を押し殺すと、全力で廊下を駆け出した。
しばらくして年長の男が息をつき、口を開いた。
「ここから二階に上がって、廊下を突き当たりまで向かえ。その後は――」
体の痺れが強くなり、彼は言いにくそうに言葉を区切りながら道を教えてくれる。
聞き終えた後、みなもは「分かりました」と言って彼らに背を向けると、足早に階段を駆け上がった。
二階に足を踏み入れ、後方から男たちが現れないことを確かめると、みなもは眼差しを強くして廊下の先を見た。
(……いずみ姉さん)
きっと会うのはこれが最後になるだろう。
記憶を奪われまいと激しく抵抗して、あの穏やかで優美な瞳に憎しみを宿し、こちらを見てくる――そんな姿を少し想像しただけで、泣きたくなってしまう。
こんな事態になっても、大好きな姉だという思いは変わらない。
胸の奥には、まだ一緒にいたいと願う気持ちも残っている。
それでも、大好きだからこそ自分が姉を止めなければ。
みなもは歯を食いしばり、残っていた未練を押し殺すと、全力で廊下を駆け出した。