夏の空を仰ぐ花
それから数日経っても、彼女が現れることはなかった。


あたしと補欠の距離も縮まることはなく、かと言って、広がるようなこともなかった。


球技大会が終わるとすぐに地区大会。


地区大会が終わる頃には残暑も緩み、蝉時雨も終盤を迎えた。


9月が終わり、朝と夜は肌寒さを覚えるくらいに涼しくなって、秋がそこまで来ていた。


空は清く透き通り、行く道端では満開の秋桜が風に揺れている。


こうして夏は過ぎ去り、淡々とした日々が続く中、10月に入ると一気にせわしなくなった。


補欠も次第に元気を取り戻したようで、いつものように健吾とじゃれあう姿が目立つようになっていた。


10月も2週目にさしかかると校内は浮き足立った。


それはきっと、来週末に予定されている南高の文化祭が理由だ。


放課後の校舎は祭り騒ぎのように、文化祭の準備で賑わいを増していた。


1階から3階まで、日が暮れて暗くなってもなお、人であふれ返っていた。


文化祭の準備が思いの外楽しくて、あたしはもうすっかりその存在を頭の片隅に追いやってしまっていた。


涼子さんだ。


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