夏の空を仰ぐ花
あたしに文句を言われて怖じ気づいたのだと思い、補欠を諦めたんだと勝手に決めつけていた。


しかし、ライバルとの再開はそこまで迫っていた。


そして、それがひとつのキッカケになり、あたしの恋は一気に奈落の底に突き落とされ、一気に加速した。











文化祭前日。


18時になっても戻って来ないふたりを待ちわびながら、あたしと健吾は教室でやきもきしていた。


ひとつの机に向かい合って、待ちくたびれていた。


「遅っせえなあ」


蛍光灯を見上げて眩しそうに目を細めながら、健吾がふーと息を吐き出した。


10月にもなると、日暮れは急速に早まる。


窓の外はもうすっかりク暗闇にとっぷりと浸かっていた。


ガタガタガタガタ、貧乏揺すりを始めたあたしを、健吾が睨む。


「おうおう、翠」


「何だ」


「やめれや、それ! 女のくせに貧乏揺すりすんな」


「うっせい! 貧乏揺すりじゃねえし。ポルターガイストじゃ。バカ健吾」


チッと舌打ちをしたあたしを見て、健吾は疲れきった顔をして机に突っ伏した。


「ちくしょー。何で翠と一緒に待ってなきゃなんねんだべ」


なんだと?


こちらとて、健吾なんかとふたりきりになりたくないわい。


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