夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
私物を鞄に詰め込んでいると、レジ袋からそれを取り出して、


「これ」


と補欠が左手を突き出した。


「……え」


あたしは目をぱちくりさせた。


補欠が差し出してきた物は、あたしの大好きな板チョコだった。


「くれんの? あたしに?」


無表情でこくりと補欠が頷く。


「いいのか?」


「おー」


真っ赤な包装紙のミルクチョコレート。


板チョコは、あたしの青春の主食だ。


「あんがと! やった!」


両手で受け取ってジャンプすると、補欠がクスと小さく笑った。


まぶし……。


急激にほっぺたが熱くなった。


補欠は笑うと目が半分になる。


「けど、なんで?」


照れ隠しにぶっきらぼうに聞くと、補欠はちょっと困ったように苦笑いした。


「や……安売りしてたから?」


なんで疑問形なんだ。


「そうか。安売りしてたのか」


これは……奇跡だ。


「安売りか。なるほど」


どんな理由にせよ、これは奇跡だ。


両手でしっかりと板チョコを掴んで、真っ赤な包装紙をじっと見つめた。


これは……大事件だ。



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