夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「良かったじゃん、補欠!」


全然、良くないのに。


「ファンは大切にしときな」


あたし以外のファンなんて大切にするな。


補欠のファンなんて、抹消してやりたいくらいなのに。


でも、もう止まらなかった。


「すいません、返して下さい」


と若菜ちゃんに伸ばした補欠の手を、あたしは自らの手で引っ込めさせた。


「いいの! いいの! 若菜ちゃん、早く交換しちゃって」


「えっ……」


と声を漏らして目を丸くしてあたしを見つめたのは、涼子さんだった。


あたしは涼子さんの視線をわざと無視した。


「交換しちゃえばいいじゃんか!」


補欠。


お願い。


「あんたみたいな補欠エース、他に誰も相手にしてくんないって」


こんなに大好きなのに。


涼子さんと、アドレス交換しないで。


「一生に一度の大チャンスかもよ!」


あたしの心はボロ雑巾みたいに、ズタズタに汚れていた。


口が止まらない。


もう、やけくその他の何でもなかった。


「この人と付き合っちゃえば? おめっとさーん」


全然笑いたくなんかないのに、あたしは頑張って笑った。


笑うことを苦痛だと思ったのは、生まれて初めてだった。


「何だよ、それ!」


補欠が眉間にしわを作って、あたしを睨んでくる。


「すっげえイラつくんだけど」


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