夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
あたしは携帯電話を開いて、震える指で受信メールをスクロールし続けた。


だめ。


絶対に嫌。


交換なんかしないで。


手のひらにじっとりとした不快な汗がにじむ。


「いや。でも、おれ……」


「じれったいな。うじうじしてんじゃないよ」


どうして、そんな行動に出てしまったのか、自分でも全然理解できなかった。


でも、そうなるよりはマシだと思った。


怖かった。


いいですよ、喜んで、なんて補欠があっさりアドレスを教えちゃうよりマシだって、そう思った。


補欠自らの手で承諾されるよりマシだと思った。


だから、いっそのこと。


あたしは心とはまるで正反対の行動をとっていた。


自らの意志で。


その方がマシだと思った。


「補欠。携帯貸しな」


あたしはパイプ椅子からガタリと立ち上がった。


「は?」


真っ赤な顔でポケンとしている補欠の顔なんか見たくなくて、あたしは乱暴に学ランから補欠の携帯電話を引っこ抜いた。


「翠! 勝手に触るなよ、返せ」


奪い返そうとする補欠をたくみに交わして、あたしは若菜ちゃんに携帯を投げた。


「えっ! わわっ」


慌ててキャッチした若菜ちゃんが、ふうっと安堵の表情を浮かべる。


ムッとする補欠からあからさまに目を反らして、左肩をバシバシ叩いた。


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