夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
あたしは爆発しそうな感情を必死に抑えつけて、着うたサイトを開いて震える指でスクロールし続けた。


あゆの新曲を見つけて、ダウンロードしようとした、その瞬間だった。


補欠の一言が、あたしの恋心をザックリ切り裂いた。


「アドレス、交換しましょうか! 涼子さん」


うそ……。


カシャン。


あたしは携帯電話を足元に落として、とっさに補欠を見つめた。


体が真っ二つに張り裂ける。


補欠が真っ直ぐ見つめていたのは、あたしじゃなくて、嬉しそうにはにかむ涼子さんだった。


















最悪だ。


ため息を吐いて泣きたいのを必死に我慢していると、


「学祭なのにメール? 翠ちゃんてば」


と話し掛けてきたのは、笑顔の花菜ちんだった。


その屈託のない笑顔に、窮地に立たされていたあたしは間違いなく救われた。


ほっとした。


「おーう、花菜ちん! 暇でさあー、着うたとってたのさあ」


ディスプレイを覗き込んだ花菜ちんが、笑顔に花を咲かせた。


「あ、あゆだあ! あたしもあゆの新曲ダウンロードしたよ」


「まじかいな」


あゆの着うたに耳を澄ませていると、


「ねえ……」


花菜ちんが不思議そうな顔をして、あたしの顔を覗き込んできた。



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