夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
誰も居ない廊下に、あたしと補欠の足音だけが鮮明に響く。


教材室をあとにして階段を下ろうとしたその時。


バーン、と乱暴に戸が開く音がして、あたしと補欠は立ち止まり同時に振り向いた。


あたしはなぜか不安になった。


戸が乱暴に開いたから。


だから、補欠の手を強く握り直した。


表情を歪めて苦虫を噛んだような顔の健吾が、教材室から出てくる。


たったひとりで。


あっこの姿はない。


告白されて、苦い顔をした人間は初めて見た。


健吾がこっちに向かってくる。


なんで、こんなに胸がざわつくのか検討もつかなかった。


うつむき加減で歩いて来る健吾。


「健吾」


補欠の声に、弾かれたように顔を上げた健吾が、


「あ……」


あたしを見たとたん、ものすごく気まずそうに口をつぐんだ。


でも、コロリと表情を変えて、健吾はいつもの調子でヘラヘラ笑う。


「何だ何だ。おてて繋いで。初々しいな、こんにゃろ」


あからさまに、ぎこちない。


「行こうぜ」


「おい、待て」


あたしは補欠の手をほどいて、健吾の学ランをむんずと掴んだ。


「あっこは? なんでお前ひとりなんだよ」


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