夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「愛子」


にべちゃんに呼ばれて、あっこが椅子を立った。


「はい」


その向こうで、健吾が口を開けてあっこを見つめている。


開いた口が塞がらない、そんな顔だ。


「父の仕事の都合で、急だけど、転校することになりました。12月早々に北海道へ行く予定です」


みんなが騒然とする中、健吾だけが苦笑いを浮かべて、ぷいっとまた背中を向けてしまった。


健吾の表情を見て、切なくなった。


健吾も、ようやく納得したのだろう。


「あと1ヶ月だけど。変わらず仲良くして下さい。みんなとたくさん想い出作りたいから」


どこからともなく、拍手が沸き起こり喝采となった。


教室内が、温かい空気に包まれていた。


ホームルームが終わったとたんに、みんながわらわらとあっこに集まっていった。


でも、健吾はいつもと何ひとつ変わった様子は見せず、おもむろにスポーツバッグを背負って教室を出て行く。


補欠がスポーツバッグを背負った瞬間、あたしは教室を飛び出して、健吾を捕まえた。


「健吾!」


そのスポーツバッグを力ずくで引っ張ると、


「ギャー! へんな女に捕まった!」


健吾はゲラゲラ笑った。


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