夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「やっと来たか。早く席につけー」


そう言って、にべちゃんは連絡事項をつらつらと述べ始めた。


にべちゃんの話を半分以上聞き流しながら、あたしは健吾を見つめ続けた。


廊下側の席。


健吾は机に片肘をついて、壁の方を向いていた。


まるで、斜め後ろの席のあっこに背中を向けるように。


健吾とあっこの距離は机ふたつ分しかないのに、遥か遠く離れているように見えた。


健吾……。


あのさ。


すごく、言い辛いんだけどさ。


あっこ、転校しちゃうんだってさ。


壁の方を向いたまま動かない健吾の背中に、あたしは心の中で問い掛けた。


健吾は、このままでいいのか?


「えー、最後になってしまったんだが。大事な話がある」


にべちゃんが真剣な面もちで続ける。


「実は、愛子が転校することになった」


その瞬間、教室内がざわりと騒然となった。


クラス中の視線が集まる中、補欠が振り向いてあたしを見てきた。


「翠、知ってた?」


「んにゃ。今さっき、あっこから聞いたばっかだ」


あたしが答えると、補欠は「まじかよ」と呟いて、


「……そういうことか」


と妙に納得した様子を見せた。


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