夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
響也。


あんた、翠ちゃんにへんなことするんじゃないよ。


と捨て台詞を吐いて。


洋子を見送ったあと、あたしは二階の補欠の部屋に行くことにした。


「気を付けろよ。着物なんだから」


トントン、階段を上って行く補欠。


「分かってらい!」


と一段目に足をかけようとしたその時だった。


「え……」


グラリと目の前が歪んだ。


スカッ……トン。


「……え」


一瞬、自分でも何が起きたのかよく分からなかった。


上から見ていた補欠が、


「何やってんだよ」


と笑ったけど。


「なに……って」


あたしは笑えなかった。


やっぱり、今日は目が覚めた時からおかしい。


今、確信した。


階段に片足を乗せたのに。


自分ではちゃんと乗せたと思ったのに。


あたしの足はスカして、床に着いていた。


まるで、透明な板があってそこを踏んだような、不思議な感覚だった。


なんだ?


あたしは何度か瞬きを繰り返して、じっと階段を見つめた。


もう一度、同じように足を乗せる。


……トン。


今度はちゃんと板があった。


不意に、安堵の息が思いっきり漏れていた。


「翠?」


上で補欠が不思議そうな顔をしていた。


なんだか不安で、ちょっと怖くて、あたしは一気に階段を駆け上がった。


「補欠ー!」


さっきの……何だったんだ……。


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