夏の空を仰ぐ花
「へえ、涼子さん来てたのか」


「おうとも。でな、これくれた。つか、貰った!」


あたしはずいっと補欠の前にハンカチを突き出した。


「これな、戦友の証なんだぜ!」


「戦友?」


手を休めて、補欠がハンカチを見つめた。


「戦友って、翠と涼子さんが?」


「そうとも! だって、あたしとお涼は補欠を奪い合った仲だろ?」


「あ……いや……」


困った顔をした補欠の胸に、まるでぶつかるようにあたしは飛び込んだ。


「えっ!」


「勝利したのは、このあたしだけどな」


ぎゅうっと抱き付くと、


「うわあ……また……」


と補欠は困り果てて、額を左手で抑えてふらついた。


大好き、補欠。


「ちょいと、そこのバカッポー」


あたしの肩を叩いたのは、顔を引きつらせる健吾だった。


「公衆の面前で堂々とイチャこいてんじゃねえぞ。見ろ、周りをよーく見ろ!」


「なにー?」


補欠を抱きしめながら首だけを動かしてみる。


「おお」


確かに。


今、あたしは注目の的だ。


補欠がふらつく。


「勘弁してくれよ……」




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