夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「なんで翠なんだよ……なんでっ……くっそうー」


体をぷるぷる震わせながら。


あたし、全然いい子なんかじゃないのに。


料理も裁縫もできなくて、掃除なんか嫌いだし。


自己中で意地っ張りで、母を困らせてばかりのわがまま娘なのに。


ただでさえそんな状態なのに、あたしは今、もっと迷惑を掛けようとしているのだ。


……違う。


もう、掛けてしまっている。


こんな親不幸娘、他にいない。


後悔で、押し潰されそうだ。


どうせこんなことになるなら、もっと手伝いとかやっときゃ良かった。


もっと、いい子でいればよかった。


「翠、負けちゃならんぞ。絶対、治すぞ」


それでも、こんな跳ねっ返りの娘を思って母が泣いているのかと思うと、涙が止まらなかった。


「分かってらいっ」


泣くあたしを抱き締め返して、母が言った。


「お前は、あたしとたっちゃんの自慢の娘だ。絶対、治るに決まってんだ」


涙で、声がつまる。


代わりに頷くことで精一杯だった。


「心配するな。母も一緒だ。一緒に闘ってやる」


そして、母はあたしをそっと離し目を見て笑った。


「いいな。ひとりだと思うなよ。ひとりで闘わせるようなことは、絶対にしないからな」


やっぱり、この女はただ者じゃない。


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