夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
息が止まってしまうんじゃないかと思った。


補欠の腕の中で、このまま心臓が止まったらどうしようと心配になった。


息ができないくらいドキドキした。


「ヤバイとか、そんなの問題になんないくらい、惚れてしまったっつうか……」


「それ、まじで言ってんのか」


心臓が破裂寸前だ。


「まじに決まってんだろ。なんで分かんねえんだよ」


「じゃあ、ほんとに切るぞ。髪の毛、切るかんな」


「おお」


「後で後悔すんじゃねえぞ。補欠」


「しねえよ。つうか、そんな中途半端な気持ちで、お前と付き合ってるわけじゃねえんだよ」


「……」


「おれは、本気だ」


泣きそうになった。


嬉し過ぎても涙が出るんだな。


だけど、我慢した。


嬉し泣きは、もう少しあとまで大切に保管しておこうと思う。


補欠が、あたしを甲子園に連れてってくれる、その日まで。













病室に戻って、出勤する母と、登校する補欠を見送って、あたしは看護師さんから指定された院内の理容店へ向かった。


「Hey、カリスマ店長!」


ひげ面のこじゃれた男の理容師さんに、あたしはでっかい声で言った。


「バッサリやっとくれ! ちなみに、浜崎あゆみたいなイケてるショートにして!」


理容師のおっさんは面白可笑しそうに笑って、あたしを椅子に誘導してくれた。


「うん。がんばってみるよ」


「イケてる、めちゃカワショートね!」


「はいはい」




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