夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
そして、その日がやって来た。
9月15日。
「みどりねえちゃん、しゅじゅつってなあに?」
朝から、賑やかだった。
母が、茜と蒼太を連れて来た。
ベッドに横になっているあたしに、茜が好奇心たっぷりの目で聞いて来る。
「しゅじゅつ、ってなあに?」
うーん、と少し考えて、あたしはニタリと微笑んだ。
「手術ってのはなあ、超かっこいいんだぞ」
かっこいい、その言葉に小さなふたりはすぐに食いついて来た。
「翠ねえちゃんな、サイボーグになるんだ」
「さいぼうぐう?」
「ぼうぐ?」
「そうだぞ! アンパンマンみたいに強くなるんだ!」
おー! 、と拳を突き上げると、茜と蒼太も「おーっ!」と小さな拳を天井に突き上げた。
「おい、翠。テキトーな事、おチビどもに吹き込むんじゃねえぞ」
母が、呆れ顔で笑った。
「吹き込む、とは人聞き悪い。子供に夢を与えて何が悪い!」
ギャアギャア騒いでいるところに、
「おはよう、翠」
とキリッとした表情で入って来たのは、公式試合用のユニフォームに身を包んだ補欠だった。
鼻血を吹くかと思った。
練習用のユニフォーム姿は飽きるほど見てるっていうのに。
胸元に筆記体で【Minami】と刺繍された、白いユニフォーム。
公式試合用のユニフォーム姿の補欠は知らない人またいにかっこよくて、あたしはこの期におよんで、再び恋に落ちてしまった。
猛烈にかっこ良過ぎる。
【1】
エースナンバーを堂々と背中に背負った補欠は、冗談抜きにかっこよかった。