夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「Guten Morgen、補欠! カッコいいじゃんか」
「は?」
補欠がガックリと肩を落とした。
そんな些細な動きさえカッコよく見えて、どうしようもなかった。
「グテン……モゲ……何すか、それ」
「ドイツ語で“おはよ”って意味よ! 分かんないの? これだから補欠は」
あたしはベッドから体を起こして、補欠を見つめた。
すごいじゃん、補欠。
やったじゃん。
本当に、南高のエースになったんだな。
カッコいいじゃんか。
エース、か。
今日は、春に開催される選抜の甲子園出場をかけた、秋の地区大会開幕の日でもある。
だから、今日は、補欠がエースになって初めての公式戦だ。
「じゃあ、9時から開会式だから。おれ、そろそろ行くな」
病室を出る前に、
「あ、そうだ」
補欠はスポーツバッグからおもむろにそれを取り出して、
「これ。手術室向かう前に開いて、見て」
とあたしの手のひらにトンと乗せた。
「何?」
「補欠流、黒魔術がかかってるから気をつけろ。呪われるかも」
ゆっくり指を広げると、それは、数日前、補欠が「一羽だけ」と持ち帰った緑色の折り鶴だった。
「何これ。あたしが折った鶴じゃん。何か細工でもしたのか?」
スポーツバッグを背負い直した補欠に聞くと、
「だから、補欠流黒魔術だって。翠の手術が無事に成功するように」
とやわらかく微笑んだ。
補欠流、黒魔術?
あたしの手術が成功するように?
じゃあ、これには、補欠の祈りが込められてんのか。
思いがけないサプライズに、不意に口元が緩んだ。
嬉しかった。
有名な神社のお守りを貰うよりずっと、嬉しかった。
「あんがと! 補欠」
あたしは、弱い力で鶴をきゅっと握りしめた。
補欠が病室を出て行くと、「見送りしてくるから」と母はおチビふたりを連れて、補欠を追いかけて行った。
「は?」
補欠がガックリと肩を落とした。
そんな些細な動きさえカッコよく見えて、どうしようもなかった。
「グテン……モゲ……何すか、それ」
「ドイツ語で“おはよ”って意味よ! 分かんないの? これだから補欠は」
あたしはベッドから体を起こして、補欠を見つめた。
すごいじゃん、補欠。
やったじゃん。
本当に、南高のエースになったんだな。
カッコいいじゃんか。
エース、か。
今日は、春に開催される選抜の甲子園出場をかけた、秋の地区大会開幕の日でもある。
だから、今日は、補欠がエースになって初めての公式戦だ。
「じゃあ、9時から開会式だから。おれ、そろそろ行くな」
病室を出る前に、
「あ、そうだ」
補欠はスポーツバッグからおもむろにそれを取り出して、
「これ。手術室向かう前に開いて、見て」
とあたしの手のひらにトンと乗せた。
「何?」
「補欠流、黒魔術がかかってるから気をつけろ。呪われるかも」
ゆっくり指を広げると、それは、数日前、補欠が「一羽だけ」と持ち帰った緑色の折り鶴だった。
「何これ。あたしが折った鶴じゃん。何か細工でもしたのか?」
スポーツバッグを背負い直した補欠に聞くと、
「だから、補欠流黒魔術だって。翠の手術が無事に成功するように」
とやわらかく微笑んだ。
補欠流、黒魔術?
あたしの手術が成功するように?
じゃあ、これには、補欠の祈りが込められてんのか。
思いがけないサプライズに、不意に口元が緩んだ。
嬉しかった。
有名な神社のお守りを貰うよりずっと、嬉しかった。
「あんがと! 補欠」
あたしは、弱い力で鶴をきゅっと握りしめた。
補欠が病室を出て行くと、「見送りしてくるから」と母はおチビふたりを連れて、補欠を追いかけて行った。